文武両道 臥薪嘗胆

日々の修業や生活の中で考えたことや思ったことを綴っていきます

怪我について

武道にはケガが付き物です。

僕も先日、柔道の稽古中に負傷しました。

いい機会なので僕のケガに対する考えをまとめておこうと思う。

 

怪我の種類

武道でのケガは二種類ある。

一つは、スポーツや日常生活でも起こるであろう、偶発的な事故による負傷。

もう一つは、攻防によるダメージとしての必然的負傷。

 

前者については思わず起こってしまうことで、防ぐのは困難だと思われるかもしれない。

しかしどういう場合に危険か、というのは先生や先輩が経験でけっこう知っている。

・こういうことは危ないからしてはいけない

・こういうときは怪我につながりやすいから注意すべし

という指導がちゃんとされるべきだし、弟子・後輩もそれをよく聞いて、無用のケガは防止すべきだろう。

 

後者についてはやってるうちに慣れるしかない面もある。

投技や打撃による打撲、擦り傷、絞技・関節技による圧迫や捻りの痛みは、ある程度は仕方がない。

小さな負傷でいちいち大事を取って休んでいては稽古が進まないし、鍛えて強くなっていけばダメージも少なくなる。

また、痛くてもガマンして頑張ることで精神的に鍛えられるという、古臭い根性論もある程度は価値があるだろう。

しかし練習中に積極的に相手を痛めつけるようなやり方をする人がいるが、これを僕は肯定しない。

それによって片方がビビってしまったり痛みを嫌がることで消極的になってしまったり、逆に怒りをぶつけあうような練習になってしまったりして、結局お互いに効果的な技術向上が望めなくなるだろう。

 

怪我をした時の考え方

ケガをすると、たとえそれがどの部位であれ身体の動きに支障をきたす。あらゆるところが連動して動いているからだ。

なのでアイシングや固定など応急処置をしっかり施し、タンパク質やビタミンなど体を修復する栄養を意識した食事をしっかり摂って、できるだけ速やかな回復ができるよう努めるべきなのは当然。

 

安静か、我慢して頑張るか

ここで、ケガをしたときは治るまで安静にするべきか、テーピングで固定したりかばったりしながらでも練習を続けるべきか、という問題がある。

これは試合までのスケジュールとか、怪我の程度や部位によって変わるだろうし一概には言えない。

よく第一線で活躍するアスリート達が大怪我に苦しみながら、試合に向けてだましだまし激しい練習しているのを見ると、

実力はあるんだから少し休んでコンディション改善する方がいいんじゃないか?

とも思うが、トップレベルの世界で練習量を落とすリスク、みたいな次元の話は僕の想像の及ぶところではないので何とも言えない。

 

ランボーのように痛みを無視する!

試合や実戦中に負傷したものの負けられない!というような、その場限りの戦いではもちろん必要な気構えだと思う。

しかし長い目で見ると、体の損傷を知らせてくれている信号を無視して動かし続けると取り返しのつかないことになるかもしれない。

痛み止めを打ったり服用することで動こう、という発想も、同様の考え方でメリットデメリットを検討したらいいだろう。

 

負傷部位をかばいながら練習することが、実戦で負傷したときの想定になる!

試合なら無理せず負けてもいい。あるいは棄権してもいいだろう。

しかし実戦であれば、敗北=死。

となれば身体の一部が負傷して使えなくなっても、生き延びるために戦闘継続して勝たなければならない。

だからたとえば右腕をケガしたときには、左腕だけで戦う状況設定の練習だと思って稽古をする。

指を怪我した場合は道衣を掴んだりできないから、腕で抱えにいったりと、握らずに戦う練習をする。

これはけっしてお茶を濁した不十分な稽古ではなく、いざ実戦でそうなったときに、使える部位だけ使って何とか戦う練習になるのだ。

 

怪我をすることで、身体感覚をつかめる

普段は自分の身体の骨や筋肉、腱などがどう動き、連動しているのか、身体と繊細に対話しなければわかりにくい。

しかしケガをしたときには、どういう動きに痛めた部位が関わっているのかを、鋭い痛みがわかりやすく教えてくれる。

身体感覚をつかむ難易度が一気に下がるのが、ケガをしている時だ。

悪化しない程度に慎重に、少し動かして痛みを感じるのはいい稽古になる。

 

結局、怪我との付き合い方も経験

いろいろ書いてきたが、つまりはケースバイケース。

怪我なんかガマンしろ!だけでもダメだし、

怪我したら無理をせず安静に!だけでも軟弱すぎる。

状態や状況次第で、無理してもいいか大事を取った方がいいかは変わる。

ここの判断はもう長年いろいろ経験して学んでいかねばわからない。

 

未熟なうちは精神的にも弱いから、動いて問題ないケガでも痛かったら休みたくなるだろう。そこでガマンして頑張らないといつまでたっても強くなれない。

弱音吐いてんとやれ!って言ってくれる指導者はありがたい存在。

逆にやる気が強く、痛みをこらえて頑張るのはいいけど、それで悪化して後遺症残ったりしたら将来的にマイナスだ。

それはヤバイから止めとけ!って言ってくれる指導者がいないと取り返しのつかないことになりかねない。

 

なので、自分で判断がつくようになるまでは、先生や先輩に自分の状態をちゃんと伝えて、指示を仰ぐのがよいと思う。

過去に悔しい経験をしてきたり、つらい苦痛を味わってきたり、取り返しのつかない後遺症を抱えた先人たちがいっぱいいるので、無味乾燥な紙の知識ではない、血にまみれた生身のアドバイスが聞けるはずだ。

 

 

ちなみに病院や整骨院などの治療者にアドバイスを求めたら「治るまで安静に」って言われるから、そりゃ確かに間違ってはないけど、修業者にとってはあんまり参考にならないんじゃないかな。

でも治療者でもまれに武道家やアスリートに理解のある方もいて、そういう人は動かしていい範囲や負傷部位に負担のかからないフォーム、積極的なリハビリやトレーニング方法を教えてくれたりする。

こういう治療院に出会えたらとてもありがたいので、大事にしましょう。

武道にケガは付き物なので。

 

 

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